そして、少年はリンのいる部屋に毎日訪れて、そして少しずつ覚えてきた単語を話して意思疎通をはかる。

 少しずつリンはこうして、この家の人間と心を通わせていった。
 少年の名前がオスヴァルトということを知るのは、もう少しあと──



◇◆◇



「いけませんね、月が出ているからでしょうか。あの日のことを思い出しました」

 リンは自室で窓際から外を眺めて呟く。
 オズとリンはお互いに勉強を重ねて言葉を覚えるようになり、そして不自由なく暮らせるようになった頃にリンはメイドとして働きたいと志願して今に至る。

 そして、ある日オズはリンにこう言った。


『リンは凛とするという意味があるんだ。リンのご両親はそうなってほしいという意味でつけたんじゃないかな』


「オズ様、お父さん、お母さん。私は凛と生きられているでしょうか」

 その呟きは月が輝く夜の闇に消えていった──