そう言えば、といった感じオズは気づき、彼女にふと軽い気持ちで聞いてみる。

「ねえ、フィーネ。毎年氾濫する川を押さえるにはどうしたらいいと思う?」

 オズが彼女に聞いたのにはわけがあった。
 フィーネは昔から歴史書が好きで様々な国の歴史の本を読んで知識を得ていた。
 どうやら彼女が教会にいたときによく好んで読んでおり、そして地下牢には禁書として領民から取り上げていた本が眠っており、それを暇つぶしに読んでいた。

 ふとその話をこの家に来た時に話していたのを思い出して聞いてみたのだ。
 すると、顎に手を当てて考える仕草をしたフィーネは、少し遠慮がちに提案をした。

「昔の東国のある領地では、時間はかかりましたが大きな川の氾濫を防ぐために何十年とかけて堤防をつくったそうです」
「ていぼう?」

 海のないこの国では堤防は馴染みのないものであり、オズはすぐにピンとこなかった。
 それをフィーネは丁寧に身振り手振りをつけて説明する。

「水流を見極めて高さのある石垣のようなものを作るんです。すると壁になって川が氾濫するのを防ぐことができます」
「石の壁か……!」