公爵夫人になる道のりはフィーネにとって軽いものではなかった。

「ダメっ! この手が違う!!」
「はいっ!」

 食事のマナーを学び、そして隙間時間には淑女らしい所作、そして教養を身に着ける訓練をおこなう。

「腰が引けてる!! もっと背中を伸ばす!」
「はいっ!」

 エルゼの厳しい指導はある時は夜遅くまで続き、フィーネは眠気に耐えながらもなんとか彼女の指導についていっていた。

 エルゼの留守の際には代わってリンがマナーの指導にあたる。

「いけません。その持ち方では」
「はいっ!」

 フィーネは連日の疲労にも立ち向かい、何度も何度もできないことをやり直す。
 指導を受けている時以外の時間も、ナイフとフォークの練習をしたり、ヒールのある靴での歩き方を廊下で練習したりした。
 ヒールで足は靴擦れを起こしているにも関わらず、ガーゼを当てて真夜中まで練習を続けている。