馬車はようやくエルツェ公爵邸へと着いた。

「さあ」
「ありがとうございます」

 馬車から降りる際もオズはフィーネをエスコートした。
 彼女の緊張も、彼が馴染みのオズだと知ってからはだいぶほぐれている。
 二人が馬車を降りて玄関へ向かうと、そこにはこの家のメイドと思われる人物が立っていた。

「おかえりなさいませ、旦那様」
「ただいま、リン」

 そう返答しながらオズは口をとがらせて、リンに不満だというように抗議する。
 その無言の圧力を感じたリンは、一息つくと発言を言い直した。