「まだ気づかない?」
「え……?」

 フィーネはその言葉を聞いてはっとした。

(もしかして、知らない間にご不快な思いをさせていたのでは……!? もしかして涙を流したから? 目の前で女がめそめそなんてしてたら困りますよね?! いえ、もしかしてさっきの礼がうまくできてなかったから、怒ってらっしゃる?! どうしましょう……)

 なんとも目をぱちくりさせながら顔を上下左右に細かに動かして、慌てた様子を見せるフィーネにオスヴァルトはフッと笑って口元に手を添えた。

「相変わらず変わらないね、フィーネは」
「え……?」

 そう言ってオスヴァルトはそっと髪の毛をかきあげると、そこに太陽の光が入り込み彼を輝かせた。

「君にはオスヴァルトより『オズ』といったほうがわかるかな」
「…………」
 少しフィーネは考えこむが、突然彼女の中に電流が走ったように目の前にいる彼と「彼」が合致した。

「──っ!!!!」

 フィーネは記憶の中にいたある少年のことを思い出した──