エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません


『無意味に時間を無駄にするくらいなら、暇つぶしに司法試験でも受けてみたらどうだい』

初めて会った人物に突然校内で声を掛けられ、当然意味がわからずその場では無視をした。

しかし、その日の特別講義で登壇した英利が語った『時間は有限で知識は武器になる』という言葉に、これから先の人生の指標を貰った気分だった。

有名な如月法律事務所の弁護士だと知り、彼の元で働いてみたいと強く思い法学部に進んでひたすら勉強に打ち込んだ大和は、大学二年のうちに予備試験をパスし、翌年の夏に司法試験に合格した。

学生向けではなく、予備試験を突破した人向けのインターンシップに応募したのは、フラフラしたガキだった自分が変わったところを英利に見てほしかったからだ。

今思えば、父親に褒めてほしい子供のような感情だったと苦笑してしまう。

英利は大和の期待通り努力を認めてくれ、目をかけてくれた。今の自分があるのは間違いなく彼のおかげだと断言できる。

何度も家に招かれるうちに娘の瑠衣とも顔見知りになり、たまに勉強を見てやったりもした。

五つも年下の女の子相手になにを話したらいいのか、自分の周囲にいる女たちとはまるで違う制服姿の瑠衣に当初は戸惑いがあったが、話せば話すほど、彼女のそばは居心地がいいことに気が付く。

計算や打算が一切なく、感情がすべて正直に顔に出る。中学三年生という多感な時期にも関わらず、家族と仲がいいのも印象的だった。