「こんな風に大きい案件だと、やり甲斐も一層大きいでしょうね」
努めて普段通りの声で聞いたつもりだったが、思った以上に硬く冷たい声音になってしまい、瑠衣は慌てて微笑みを貼り付けた。
「あっあの、この案件に携わったのがM&A専門の弁護士チームだって解説してたから興味あるのかなって。凄くないですか? 三兆ってもう国家予算みたいな額ですね」
取り繕うように捲し立てる瑠衣に、アナウンサーが説明している弁護士チームの詳細を見た大和が指差して教えてくれた。
「あ、俺が以前働いていた事務所のチームだ。この代表弁護士のロビンがM&Aのスペシャリストみたいな人で、同じチームだったから近くで色々勉強させてもらったよ」
「えっ! 大和さん、この人たちと働いてたってことですか?」
「四年も前の話だけどね」
「凄い……」
経済専門の有識者がこぞって絶賛する弁護士チームの一員だったなんて、彼はどれほど優秀なのだろう。
芽衣の心の中に広がった不安が、徐々に大きく黒く渦巻いていく。
(大和さんは父の望みを叶えたいと言って事務所を継ぐのを決めたけど、本当に躊躇いはなかったのかな)
かつて同じチームで働いていたメンバーの、ニュースで取り上げられるほどの仕事ぶりを目の当たりにして、自分も同じように活躍したいと思っても不思議ではない。
彼にはそれを実現させるだけの実力があるのだから。



