「ずっと大事にするって言ってくれたのを、守ってくれてるんだな」

目を細めて微笑む大和を見ると照れくさいけれど、十年近く前の出来事を覚えていてくれた嬉しさに頬が緩む。

「まだ子供だった私に、こういう長く使えるデザインのプレゼントをくれたことが嬉しかったので」
「ありがとう。大事にしてくれて、贈った甲斐がある」
「こちらこそ、ありがとうございます」

両者の間に面映ゆい空気が流れる。

「よし、行こうか」
「はい」

甘くむず痒い空気を振り切って、先に一歩を踏み出したのは大和だった。

こうして休日や互いの仕事終わりに会うようになり、今日が四回目のデート。

三交代のシフト制で平日に休みの多い瑠衣と、基本土日が休みとなる大和の予定は合わせにくいが、なんとか時間を見つけてはふたりで食事に行くなど会う機会を作っていた。

フロント業務をしていると、宿泊客などから都内でオススメのレストランを聞かれることが多いため、ひとりではなかなか入りにくい高級店や、海外からの客にも気に入ってもらえるような日本料理の店など、口コミに頼らず自分でも足を運んでみたいと思っていた。

いつも大和は行きたい店や食べたいものの希望を聞いてくれるため、瑠衣は彼の言葉に甘えて素直にそういった店をリクエストさせてもらっている。

今日は夕食の前に行きたい場所があるとあらかじめ言われていたため、指定されたこの駅での待ち合わせだった。