エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません


「えっ、なになに、デート? 誘われたの?」

梓とは瑠衣と同じく幼い頃にホテルマンのもてなしに感動し、フロント業務に憧れてアナスタシアに入社したと聞いて以来ずっと親しくしていて、休日に遊びに行くほど仲のいい同僚兼友人だ。

瑠衣が有名な如月法律事務所の所長の娘だということも話していたので、その事務所の後継者を産むために結婚を決めたことも打ち明けた。

最初は『あり得ない! そんな愛のない結婚なんて絶対後悔するよ!』と自分のことのように怒って心配してくれた梓だが、大和の人となりや父への思いを伝え、瑠衣が悲観して結婚を決めたわけじゃないことを話すと、今ではその決断を応援してくれている。

「デートっていうか、買い物? 付き合ってほしいって」
「結婚前提の男女がふたりで買い物するならデートでしょ?」
「そう、かな?」
「いや、私だって経験ないからわからないけど」

梓は瑠衣よりも若干背が高く、フロントの制服である黒のシャツに紺碧のジャケット、グレーのタイトスカートが羨ましいほど長い手足に映える。

容貌も童顔の瑠衣とは違い、清楚な正統派美人な梓だが、いまだに恋愛経験はゼロらしい。

初恋もまだだと言っていた梓は困ったように肩を竦めて、脱いだジャケットをロッカーの中に収めながら、「でもよかったね」と笑った。