エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません


キッチンに向けられた視線に気付いたのか、大和がバツが悪そうに苦笑した。

「あー、ちゃんと食後に片付ける」
「ふふっ、あとでふたりで洗い物しましょうね」

一緒に手を合わせて、大和の作った料理を美味しいと言いながら食べる。粗みじんにした生姜が効いていて、どんどんご飯がすすんだ。

食後は約束通りふたりで食器を洗いながら、今日の出来事を話した。

瑠衣が頑張って英語を使って観光地への道順を説明したのだと話すと、大和は楽しそうに聞き、「頑張ったな」と頭を撫でて褒めてくれる。

(あぁ、幸せだな)

洗い終わった食器を拭きながら、なにげない日常の幸福を噛みしめる。

瑠衣はこの家の家具を買いに行った時のことを思い出した。

まだ入籍前の夏の暑い日、結婚する実感が湧かないながらも想像していた幸せな新婚生活が、今まさに実現している。

きっとこうした毎日を繰り返しながら、少しずつ家族になっていくのだ。