エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません


「そうだ。ひとつ聞いてもいいかしら?」

問いかけは瑠衣ではなく、大和に向けられている。

「……なんだ?」

沙良の奔放な発言に呆れながらも、諦めると言質を取れたおかげか、幾分声が柔らかく感じられる。

「Adam社が近々AI創薬に乗り出すって噂があって、どこか大手のIT企業を買収するんじゃないかって話があるんだけど、国内にはそんな動きが見られないのよね。それならイギリスか日本あたりかもっと思ったんだけど」

瑠衣にはなんの話かさっぱりわからなかったが、大和には通じたのか、沙良の言葉に答えはしないものの、口の端をわずかに上げ、肩を竦めてみせた。

「……まさかとは思ったけど。そう、日本でも手腕を発揮しているわけね」
「さあ。なんのことだか」
「相変わらず食えない男ね。いいわ、情報公開を楽しみにしてる。じゃあ」

そう言うと、沙良は伝票を持ち、ヒールの音を響かせながらふたりの前から去っていった。

(なんだか、色んな意味ですごい女性だったな……)

彼女の背中が見えなくなっても呆然としていると、大和が心配げに顔を覗き込んでくる。