確か初対面の時に、彼女は大和を『仕事しか頭にない堅物』だと称していた。
そんな彼が、仕事以上に瑠衣が大切なのだと言い切ったのが受け入れられないのだろう。
「そんなに、その人が大事?」
「あぁ」
「世界を動かす仕事よりも……?」
「そうだ」
きっぱりと言い切る大和に頼もしさを感じる一方で、諸手を挙げて嬉しいと表情に出すわけにはいかなかった。
沙良の綺麗にネイルの施された指先が宙を舞い、それから皺の寄った眉間を押さえる。
泣いてしまうのではと危惧したが、それを瑠衣が気遣うのも違う気がした。
三人の間にしばし沈黙が流れる。ほんの数秒が、いやに長く感じた。
「……わかったわ」
最初に口を開いたのは沙良だった。
「諦める。大和をアメリカに連れ戻すのも、大和自身も」
軽く両手を上げ、降参だとポーズで示しながら深い溜め息をついた。



