「好きだって自覚したものの瑠衣と会う機会はそこまでないし、先生の娘だって思うと表立って口説くのも躊躇いがあった。そんな時にあの提案を聞いて、一も二もなく飛びついた。瑠衣と結婚できるなら、事務所を継ぐのに迷いはなかった」
「……アメリカへ行きたいとは思わなかったんですか?」
「思わなかった。元々留学したのは日本企業のグローバル化に対応する力をつけたかったからで、向こうで働く気はまったくなかったよ。嘘や遠慮じゃなく、本当に」
「でも……」
不安を宿した瞳を揺らす瑠衣に本心が伝わるよう、真っすぐに見つめる。
「前に『機会があれば』なんて言ったのは、瑠衣が留学していた俺を尊敬してるみたいに言ってくれたから、カッコつけたかっただけなんだ。本当にやりたい仕事は日本にある。案件の大きさに拘りはないし、アメリカに未練もない。それより、世話になった先生の事務所を守りながら、瑠衣と一緒にいたい」
「大和さん……」
元々学生時代に英利に出会い、彼のもとで働いてみたいと思ったのがきっかけだったが、実際に英利の仕事ぶりを目の当たりにするうち、彼のような弁護士になりたいと明確な目標となった。
穏やかな人柄でクライアントの話を汲み取るのも上手く、多方面から人望が厚い。
しかし必要とあらば時に冷徹な判断も下す判断力も実行力もあり、どれだけ大和が周囲からエリートだと言われても、英利には到底及ばない。
まだまだ彼のもとで勉強したいことは山のようにあり、『困った人や企業の手助けをする場所』だと英利が言う如月法律事務所で、彼やクライアントの力になりたかった。



