どうにも話が噛み合わない。
留学して向こうの弁護士資格を取ったのは、外資系の企業などを相手にする時に強みになると思ったからで、当初から如月法律事務所に骨を埋める覚悟だった。
しかし、瑠衣は大和がアメリカへ行きたがっている前提で話を進めている。大和は首をかしげ、彼女を見つめた。
「留学から帰国した時に、向こうでの仕事は規模が大きくてやり甲斐があったと話してくれましたよね。その時、『機会があれば』って言ってたから、きっといつかアメリカに戻っちゃうんだろうなって感じたのを覚えてて……。それに、ここ最近いつもと様子が違ったから。もしかして、私に言えないことで悩んでるのかなって」
徐々に彼女の言いたいことがわかってくると、大和は落ち着かない気持ちになった。
「大和さんにとって恩師である父からの頼み事だから、この話を断れなかったのはわかってるんです。今、私を妻として大切にしてくれているのも伝わってるし、凄く幸せです。だけど、もし父の提案がなければ、今頃大和さんは海の向こうにいたかもしれない。留学していた頃の同僚だって、あなたを待ってる。そう思ったら、私……」
言葉を詰まらせる瑠衣の瞳は再び涙を湛え、必死に気持ちを伝えようとしてくる彼女に胸が苦しくなる。
「このまま一年くらい子供ができなければ、父も後継者について考え直すかもしれない。自分の孫に事務所を繋いでいってほしいと願っている父には申し訳ないと思ったけど……大和さんにとって跡継ぎとか、私との結婚が足枷になって〝機会〟を奪ってるんだとしたら、私は妊娠するわけには――」
「瑠衣……っ!」
そこまで聞き、瑠衣がなにを不安に思っているのかを正しく理解すると、大和は抱いていた華奢な肩を引き寄せ、両腕で力強く抱きしめた。



