エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません


「俺はアメリカへ行く気はないよ」

確か、以前もニュースを見ながら『いつかまた、アメリカで彼らと一緒に働きたいですか?』と聞かれた。

その時にきっぱりと否定したはずだが、なぜ再びそんな懸念が湧いたのか。

窺うように見ると、きゅっと唇を噛み締め、潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。

「もし、父から事務所を継いでほしいと言われなかったら?」
「え?」
「事務所を継ぐ約束も、私との結婚もしないで済んでいたら、それでも大和さんはずっと日本にいましたか?」

瑠衣の質問に眉根を寄せる。

〝しないで済んでいたら〟だなんて、まるで望んでいなかったような言い方をするが、恩師の娘だと手をこまねいて見ているしかなかった大和にとって、瑠衣との結婚は降って湧いたような千載一遇の好機だったのだ。

(瑠衣と一緒にいられる今、結婚しなかった未来など考えられない)

そんな大和の思考など知らぬ瑠衣は、答えが返ってこないのに苦い顔で笑って話を続けた。

「留学してカリフォルニア州の弁護士資格を取ったってことは、少なくとも以前は向こうで働く可能性を考えてたってことですよね? でも大和さんは誠実で優しいから、私と結婚して事務所を継ぐと承諾した今、アメリカへ行きたいとは言わないでしょう?」