こんな風に泣く姿を見るのは初めてで、大和は焦燥感に駆られた。堪らず肩を抱く腕に力を込め、あやすように手でぽんぽんとたたく。
「疑うような言い方をして悪かった。ゆっくりでいい、瑠衣の気持ちを聞かせてほしい。隠さないで、全部」
「大和さん……」
探るように佐藤の話を持ち出したが、瞬時に否定した様子はとても嘘をついているようには見えない。
瑠衣が不貞を働くと思ったわけではないものの、彼女の気持ちを言葉にして聞いたことはなく、不安から口走ってしまった。
大和が自らの余裕のなさを恥じて詫びると、頬を伝う涙を手のひらで拭い、何度か大きく深呼吸を繰り返したあと、瑠衣も同じように謝った。
「私も、大きい声を出してごめんなさい」
それから、おずおずと口を開いた。
ニュースで話題になるほど大きなM&Aの案件や、短期間の海外出張で慌ただしくしている大和を見て、海外を拠点に活動した方がいいのではと考えた。
しかし子供ができてしまえば事務所を継ぐしかなくなり、アメリカへ渡るチャンスがなくなってしまうと懸念しているのだと話す瑠衣に、大和は穏やかな声音を意識して口を挟んだ。



