『カッコ悪いんですけど、言い逃げしました。少しでも考えてから返事が欲しくて。俺、その子を嫌いになって別れたわけじゃないから、後悔してて。高城先生は恋愛で失敗なんてしなさそうですよね』
照れくさそうに笑う佐藤は、まさか復縁を迫った元恋人の夫が目の前にいるとは思ってもいない。
瑠衣が彼の提案に頷くはずはないと思いながらも、その場で拒まなかった事実に打ちのめされる。
大和はそれ以上佐藤の話を広げず、曖昧に切り上げた。
過去に恋人がいたって不思議ではないし、それをとやかく言うつもりはない。
佐藤が『言い逃げ』と言ったように、彼が復縁を持ちかけてすぐに立ち去ってしまったのなら、瑠衣が咄嗟に断りを入れられなくても仕方がない。
そう頭では理解できるのに、チリチリと胸の奥が嫉妬で焦げつく音がする。こんな感情を持ったのは、生まれて初めてだった。
家では黒く渦巻く自身の醜い感情を悟らせないように振る舞っていたつもりが、どこかよそよそしい雰囲気が漂い、その日は仕事を理由に一緒にベッドに入るのを避けた。
抱いてしまえば、きっと執拗に責めてしまう。それで彼女に嫌われるのが怖かった。



