あまり深くは考えたくないが、大和が瑠衣に想いを寄せていたのを、英利は見抜いていたのではないかと思う。

だからこそ大和に瑠衣との結婚を持ちかけ、次世代への橋渡しの役割も委ねた。大和ならば、断らないと踏んだのだ。

穏やかでお茶目な印象のある英利だが、実は大胆かつ奇抜な発想で数々の案件を自分の思い通りに解決してきた鬼才だ。そのくらい考えていても不思議ではない。

瑠衣がいつだったか、弁護士にならなかったのを悔いるような発言をしていたが、英利はそんなことは望んではいない。

自分の愛娘には好きなように生きてほしいだろうし、必ず幸せになってもらいたいはずだ。

瑠衣と大和の子供に事務所を継いでほしいと語っていたのも、〝そうなったらいい〟くらいの感覚なのだと大和は知っている。

その証拠に、如月法律事務所の看板を守るのなら婿養子に入るべきかと大和が相談に行った際、英利はこう言った。

『特に名前や血筋に拘ってるわけじゃないんだ。僕はね、ただ父から受け継いだこの事務所が、困った人や企業の手助けをする場所として、ずっと続いてくれればいいと思ってる』

そう語った英利なら、瑠衣と大和の子供がたとえ弁護士にならなくとも幸せを願ってくれるだろう。

瑠衣を妻として大切に慈しみ、事務所を守り、優秀で同じ志を持った弁護士を見極めてバトンを繋いでいく。

英利が求めているのはこれに尽きる。大和はそれを寸分違わず感じ取った。