「数日前、君たちが駅前で話しているのを見た。随分親しげで、楽しそうに話していた。声を掛けるのを躊躇ってしまうほど」
「えっ?」
「去っていく彼を名前で呼んで引き止めている瑠衣を見て、嫉妬でおかしくなりそうだった。いや、おかしくなってたのかもしれない。その日から瑠衣の顔が見られなくなった」

大和の話を聞きながら、佐藤と偶然再会した日のことを思い出す。

確かに久しぶりに会って世間話もしたし、突然復縁の話を持ちかけられ、断るタイミングを逃して去っていく背中に呼びかけもした。

まさかそれを大和が見ていたなんて知らなかったし、その光景に嫉妬していただなんて思いもしなかった。

しかし、確かに目の前の大和は瞳の奥に嫉妬の炎を燃やし、睨むように瑠衣を見つめている。

「やり直したいと言われているんだよな?」
「えっ⁉ あの、どうして……」

なぜ知っているのだろう。

佐藤自身のことも、彼が瑠衣の元恋人であり、復縁を迫られていたということまで知っているなんて。

驚きに言葉をなくしていると、大和が自身の前髪をくしゃっと掴み、瑠衣から視線を外して呟いた。

「……迷っているのか?」

思いがけない問いかけに、瑠衣は理解するよりも早く否定した。