でなければ、わざわざ二年も留学してカリフォルニア州の弁護士資格まで取得しない。

きっと大和の中に、将来の展望はあったはずだ。

(だからこそ義務だけで子供をつくって、ここに縛り付けるのはよくない気がする……)

夜毎瑠衣を求めるのは、少しは自分に対する好意もあってほしいが、早く英利にいい報告をしたいからというのが大きいと思う。

その努力を無にしてしまっているのは心苦しいが、自分が弁護士にならなかったせいで大和の人生を縛ってしまったという負い目が、胸の奥から消えない。

このまま瑠衣に子供ができなければ、結婚や事務所を継ぐ話は白紙になるだろうか。

(離れたくない。ずっと大和さんのそばにいたい。でも……)

薬の入ったポーチをぎゅっと握り、瑠衣は何度も繰り返し考えるが、答えは出ない。

そのうち、大和がそれでいいと言っているのだからいいじゃないかと、もうひとりのズルい自分が頭の中で囁いてくる。

瑠衣は大和が好きで、彼だって『好きだ』と言ってくれた。

はじまりはどうであれ、今はこんなにも幸せで、両親だって子供ができれば喜んでくれるに違いない。