6限目の授業を乗り超え、放課後になった。

何とか自力で数学のプリントを仕上げて、リナさんに渡した。

15分もお待たせしてしまった。

そのことを謝ったら、全然待っていないとリナさんに笑われた。

もう今日は学校でやることがない。

帰りの支度を済ませて、教室を後にした。

校舎を出て、校門へ向かって歩いていると、どこかからテニスボールが飛んで来た。

数回程バウンドして、俺の足元に転がった。

テニスボールか…。

『あっ。ジロウ!それとって!』

聞き覚えのある声がして振り向くと、テニスコートからリカが話しかけてきた。

俺は足元のテニスボールを拾い、テニスコート方に向かって放り投げた。

ボールはフェンスを超えてバウンドし、リカの右手の中に収まった。

『ありがとね。あれ?もう帰るの?部活は?』

リカがフェンス越しに話しかけてきた。

ラケットを脇に挟み、左手首につけた赤いリストバンドで汗を拭っている。

俺はその様子を見ながらテニスコートに近づき、答えた。

『今日は休みで、明日はあるよ。じゃあな。その…。がんばれよ。』

『…ありがと。』

足早に練習へ戻るリカを見届けた後、校門の方へと歩き出した。

リカの圧倒的な長所。

それは部活動のテニスを頑張っていることだ。

実績もある。

今年の夏は地区大会を勝ち進み、全国大会出場まであと1勝という所まで迫った。

新学期早々、表彰もされて、学校内におけるリカに対する認識は、テニスが強い人で定着した。

全国大会に出場出来なかったことがあまりにも悔しかったらしい。

来年こそは出場できるように、今のうちから気合いを入れて練習に取り組んでいるとのことだ。

この部分は、リナさんから聞いた。

本人はそういうことを一切教えてくれない。

『…すげーよな。』

校舎から離れた後、誰にも聞こえない声で呟いた。

リカの試合は何回も見たことがある。

どの試合も気迫がすごい。

残念ながら俺は、テニスの技術については全く分からないし、ルールもあやふやだ。

詳しいことは分からない。

でも、人に感動を与える様なプレーをしているということだけは、素人の俺でも分かる。

普段はうるさい奴だけどな!