季節は変わって冬になった。

俺達2人は寒空の下、3時間くらい電車に乗って、海へやって来た。

冬の海が好きだと言う彼女の言葉を叶える為だった。

海岸にはサーファーの人が数人いたくらいで、閑散としていた。

風がとても冷たい。

真昼間で太陽も出ているのに、凍えそうだ。

『…。』

『…。』

俺達は手を繋ぎ、黙って海を見ていた。

寒いけど、俺の左手だけは確かなぬくもりを感じていた。

同時に、彼女が右手につけている金属製の腕時計が俺の手首に触れていて、そこからは冷たさを感じていた。

感触に意味なんて無い。

でも、誰かが与えてくれる暖かさには、誰かの冷たさが隠れている様な気がして。

意味も無く、意味を感じてしまう。

俺は今、幸せだ。

好きな人と一緒にいて、付き合って。

幸せなんだけど。

あの空き教室の出来事を想うと今でも、これで良かったのかって。

思ってしまう自分が嫌になる。