十七歳にして人生が終わった、と思った。

 教室の扉が開いた瞬間、わたしの心臓は鷲掴みされた。

「だめじゃん、小春(こはる)ちゃん。いくら好きだからって、人のもの盗んじゃ」

 そう咎められ、咄嗟にポケットに隠した佐野(さの)のシャープペンシルは、汗でぬるぬると滑った。

 教室のなかは凍えるほど寒いというのに、身体じゅうの汗が止まらない。グラウンドから聞こえていたはずの野球部のけたたましい掛け声が、途端に聞こえなくなった。

「それって窃盗だよ? 立派な犯罪」

「ま、待って。誤解しないで。これはさっき床に落ちてるのを見つけて、佐野に渡すつもりで」

「いまさ、小春ちゃんのリュックから出してたよね。
シャーペンなくしたけど見てない? って佐野が訊いたときは、見てないってはっきり言ってたのに」

 嘘つきだなあ、と明希(あき)は楽しそうに笑った。


 そのとおりだった。
 わたしは佐野のシャーペンを盗んだ。