――クリスマスイブ、会ってくれない?


 水族館の帰り道、明希はかしこまった口調で言った。
 
 微細に震える睫毛に、こわばった表情。
 不自然な明希に、わたしもまた不自然な口ぶりで「い、いいよ」と返した。

 経験ない同士のわたしたちには、まだまだ予行練習は必要のようだ。

 慣れたことといえば、くまぬちゃんだ。
 毎日見ているうちに、少しかわいく見えてきた。奇妙だけど、ちょっと愛らしい。

 慣れとはおそろしいものだ。
 ノートも時間も、いまやすっかりわたしは明希と共有している。