「あー緊張した」

車を走らせながら私の手を握る。

「断られたらどうしようかと思ってた」

苦笑いを浮かべている姿すらかっこいい。

さっきから補正フィルターがおかしくなっている。

「…最初はいい人だなって思ってたんです。
私のご飯美味しそうに食べてくれるし。

ソファーに寝ぼけて引っ張られた時に、居心地が良すぎて。

相馬さんが全然帰ってこない時に、ご飯が美味しくなくて。

好きだなって思ったんです。

髪を梳くのとか、スカート買ってくれたりとか。
すごく甘やかされてる気がして、恋人同士みたいな感じに思えて。
期待させないでほしかったんです」

後半むすくれて言うと、

「早川に、奈緒ちゃんはしっかりしてるから、甘え方わかんないタイプだと思うし。
甘やかしてずぶずぶにしてあげてって言われて。
なのによりによって今週忙しくて帰れないし。
まだまだ時間をかけたかったのに。
可愛すぎて我慢できなかった」

ほんとによかったって優しい目でこっち見てる。

早く信号変わってくれないかな。

こっちの心臓が持たない。

「それにね、ソファーのことはごめん。
うたた寝してたんだけどさ。
一生懸命起こしてくれてるのが可愛くて。
つい引っ張っちゃったんだよね。
抱き心地もいいし髪の毛さらさらだし。
どんだけ俺のこと鷲掴めばいいのって思ったんだよねー」

「え!あれわざとですか!」

どんだけ人が混乱したと思ってるのか…。

でもね。

「あのソファーのことでいい人が気になる人になったのかも知れないです。
…悔しいけど」

どうしても一言出てしまう。

むすっとするのも可愛くないなぁと自分で思ってしまうけど。

そんなところも可愛いよって、さらっというあなたにどきどきさせられっぱなしなのよ。