「茜………」
と、木陰から出てきたのは理佐と由依だった。
理佐「茜……」
由依「追いかけなよ!」
茜「そんなこと出来ないよ……」
由依「でも……行っちゃうじゃん!」
理佐「もう会えなくなっちゃうじゃん!」
茜「あいつが決めたことだもん……」
理佐「でも……」
茜「いいんだよ!あいつの夢、邪魔したくないから……」
由依「強がっちゃって……」
茜「もし今あいつを引き止めに行ったらその方が後悔が残るよ」
理佐「それでいいの?」
茜「それにあいつ……帰ってくるからって言ってたじゃん」
由依「そんなのいつになんのよ」
茜「いいんだよ!これで……」
理佐「茜………」
茜「さ、帰るよ!」
と、言って私は自転車に乗って走り始めた。
そして理佐と由依もそれ以上は何も言わずに少し離れてついてきていた。
二人は家まで来たが私が大丈夫だからと言って帰した。
そして私はその夜………
泣いた……
ベッドで泣き声を枕で押し殺して泣いた……
そして月曜日、
彼は終わりのホームルームにだけ来てクラスの皆に別れの挨拶をした。
その後、部活にも顔を出し男女全ての部員が集められそこでも別れの挨拶をした。
みんなからは拍手が起こりそれぞれにエールを送っていた。
そして一頻りの言葉が寄せられ彼はタイミングを見計らい
勇次「じゃあ、行くわ」
と、言って背を向けて門の方へと歩き始めた。
一歩二歩と彼が遠ざかって行くのに私は耐えきれず声を上げてしまった!
茜「勇次!!」
彼は立ち止まりゆっくり振り向いた。
茜「絶対強くなれよ!!」
と、私が叫ぶと右手の親指で鼻を掻いて少し笑いながら小声で言った。
勇次「プレッシャー半端ないな…」
そしてまた背中を向け右手の拳を上げてそのまま行ってしまった……
彼が門を出ていき姿が見えなくなると皆もザワザワと練習に戻っていった。
私はしばらく呆然としていたが、ポンと肩を叩かれ振り向くと冬優花が立っていた。
冬優花「あたしが日曜日付き合ってやるよ」
茜「え……!?」
冬優花「船岡山♪」
茜「え!?知ってたの?」
冬優花「朝は勘弁してねー♪」
茜「え!?ちょっとそれも知ってんの?」
冬優花「あたし外周行ってきまーす」
と、冬優花は走り出し門を出ていった。
茜「ちょっと冬優花!!どこまで知ってんのよー!!?」
と、私も冬優花の後を追い門を出た。
そして年が明けると近畿選抜大会が行われ私は……
優勝した♪
まずは私が約束を果たした。
彼から引越し先だけが書かれたエアメールが届いたが私は返事も優勝の報告も書かなかった。
彼からもその後は何も連絡は来ていないので彼がどうなったのかどんな成績をおさめているのかは知る由もなかった。
そして私たちは二年になり……
理佐が恋をした♪
今日は木曜日だ。
また渡り廊下で聞いているはず。
私たちはアップのランニングを始め、渡り廊下の手前まで来ると理佐の姿が見えた。
茜「冬優花、先に行っといて」
冬優花「え、あぁ…うん」
と、言って私は最後尾まで下がった。
茜「今日も聞いて帰るのー?」
理佐「しーっ!!」
茜「いつまでそうしてるのー?」
茜「早く言っちゃえばいいのにー!」
理佐「もぉー、ダメー!!」
理佐「ほら、みんな行っちゃったよー」
茜「あんたが言わないなら代わりに私が言っちゃうよー」
と、言いながら走り去った。
そして、理佐の恋の物語が始まるのでありました♡
THE END
最後までお読みいただきありがとうございました。
この作品は本編「だって、恋したいもん!」のスピンオフです。
本編の主人公「渡邉理佐」の親友「守屋茜」を主人公とした物語です。
この物語の終わりから本編が始まります。
もしよろしければ本編もお読みいただけると嬉しいです。
また感想もよろしくお願いいたします。