樋口「ちょっとボール打つから付き合ってくれよ」


と、言われて広場の方へ行き彼とコート一面分ほどの距離をとり構えた。


そして彼がフォアハンドで打ったボールを私は返した。


それをまた彼が返して、を繰り返しラリーをしているうちに徐々に彼のボールが重く感じ返すのに精一杯になってきた。


さすがに男子の打つ球は違う。


ただ私も負けず嫌いなので打ち負けないように必死で返した。




何回ラリーが続いただろうか、


私はミスショットをしてエッジで弾いたボールは大きな放物線を描いて彼のもとへ返っていった。


彼は左手でそのボールをキャッチしてゆっくり私の方へ歩み寄ってきた。


樋口「お前、割と筋いいじゃん」


茜「え、そうかな……?」


樋口「頑張ればレギュラーとかいけんじゃね?」


茜「うん、そりゃやるんだったらレギュラーは獲りたいよ!」


樋口「お前いつからやってんの?」


茜「高校からだよ、中学はバレー部だったから」


樋口「え、そうなのか?始めて一ヶ月や二ヶ月でそれだけ打てりゃ十分だろ」


と、珍しく話をしてくれたかと思ったら私のことを褒めてくれた。


樋口「本気だったら真剣に練習付き合ってやるよ!」


茜「え、いいの?樋口くんの邪魔に……」


と、言いかける私の言葉を遮り…


樋口「新人戦優勝すっぞ!!」


と、急に熱くなった彼の大きな声に私は驚き…


茜「えー!!」


と、言うと彼は…


樋口「大丈夫!中学の部活はほとんどがソフトだからスクールとかに行ってなきゃ硬式は経験がないはず」


茜「そっか…」


樋口「七月の大会なら目指せばいけるぞ!オレももちろん優勝狙う!だから……一緒に頑張ろうぜ!」


と、彼に言われ私は…


茜「うん♪」


と、応えた。


同じ目標が出来たのも嬉しかったが、彼のあんな表情が見れたのが何よりも私の心には響いた。


それからは部活でも冬優花を誘い居残り練習に付き合ってもらい練習量を増やした。





そして期末試験も終わりいよいよ新人戦が始まった。




第十三話へつづく…