「ねぇ、慎太郎」
「ん?」
「ほんとに、私でいいの?」
「え、俺、美夜じゃないと嫌なんだけど」
「だって私…」
「美夜は俺のお姫様なんだから、心配すんな」


強がりで、弱気な俺のお姫様の背中をゆっくり擦る。


「な、美夜」
「うん…」
「いいとこ連れてくから、日曜日空けといてよ」
「いいとこ?」
「うん、いいとこ」


7歳の頃、俺たちは婚約した。
周りからはただの子供の口約束だと思われただろうプロポーズは、今でも忘れない。
ブーケをキャッチして喜ぶ美夜の笑顔も、
ブーケを俺に手向けながら、一言一言紡ぐ美夜も、美夜が俺のお姫様になりたいと言ってくれたのが嬉しくて嬉しくて、ブーケごと抱き締めたことも
あれから10年経っても、褪せることなく思い出せる。

俺の気持ちは変わらないのに、
ここ最近ずっと、会うたびに自分でいいのかと俯いて聞いてくる。

弱気な美夜も可愛いんだけど、
俺は美夜の笑顔が見たい。