「うん!今日もカワイイ〜」

 今日夏は言った。メイクの最終仕上げに取り掛かっているところである。
最後にもう一度まつ毛を上げ、桃色のリップを塗る。


「今日もカワイイ今日夏ちゃん」の完成である。

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私が教室に入ると、いつもの光景が広がっていた。
クラスで一番おとなしい小山内さんを、ギャル達がいじめている光景。

「何も喋れねぇのかよ〜」
「まじウケるんですけど」

「は〜いはい、ストップストップ!カワイくないよ〜」

仲裁に入ると、ギャル達は「げっ、今日夏じゃん」と言って何処かへいった。

後ろ姿を見送りながら、席についたままの小山内さんを見る。
長い黒髪に、分厚い眼鏡。the・地味子といった感じだ。

「あの…今日も、ありがとうございました」

いつもの台詞。

「今日夏ちゃん、友達になってくれませんか」

…え?
小山内さんから聞いたこともない文章に驚きつつも、返事をしようと口を開いた………

…そのとき。
ギャルが戻ってきた。

「今日夏、うちらと友達になろうよ」
「そんなやつよりさ〜」

ギャル達の言葉にカチンとくる。言い返してやりますか。

「え〜、遠慮しとくよ〜」
「は?」

明らかに困惑した様子のギャル。断られるとは思ってなかったみたいだね。

「ぶりっ子のくせに調子乗んなよ!」

ようやく意味を理解したらしいギャルに怒鳴られた。
クラス中の視線がこちらに向く。

「私、自分にカワイさを求めてないし」
「自分が好きなものを外見で表してるだけ」

なんか文句ある?と言うと、ギャル達は口をパクパクさせて出ていった。
魚みたいでカワイかった、と私は思った。

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ギャルが出ていくのを見送った後、今日夏は言った。

「友達になろっか!小山内さん!」

小山内は思った。


「…やっぱり、今日夏ちゃんは今日もカワイイ」