そして誕生したのが、今世紀最大の美形夫婦。
結婚後、それぞれの会社ホームページ上で発表された結婚報告は、瞬く間にメディアで取り上げられると、二人の結納式には数多くの取材陣が押し寄せ、週刊誌は飛ぶ様に売れた。
白黒の記事に、モノクロの黒歴史。
屋敷の人間しか知る由もない個人情報はダダ漏れる始末…。
学生時代の友人からは祝いのメールが相次ぎ、それをひとつひとつ御礼の文章を打ち込むのは気が遠くなる作業だった。
仕事と結婚の両立は、二人にとってストレスでしかなく、それぞれが忙しく過ごす毎日を送り、気付けば年が明け、そして年度末決算の繁忙期を過ぎると、あっという間の春。
ここで問題が生じた…。
「定例の花見会は、二人に任せる事にしよう。新婚良縁であることを皆さんに魅せなさい。」
それは両家からの突然の伝令。
お見合い、結納式の二つの行事を遂行し、互いに干渉しない日々を送ってきた両者は、目を点にした。
結婚したら夫婦。その夫婦とやらが何か分かってない。
お互いに異なる生活習慣を送り、同じ屋根の下に居るにも関わらず、姿を見掛ける事は皆無。
世間で言うすれ違い夫婦のレベルを極限に極めた二人。
ここにきて初めて妻の番号に電話を掛けた夫。
「ーーー…相談がある。今夜時間を作ってくれ。」
「私も連絡しようと思っていたわ。」
似たもの同士?否、生い立ちが類似すると、自然とそうなるものなのか…
「今夜八時」
「リビングで」
