政略結婚から始める熱愛偽装



 本人は自分の事をお子ちゃまだとは自覚していないが、実家の倉庫には捨てられずに取ってある思い出の玩具が山程眠っているのだ。


 古くからの使用人が処分の提案を促すものの、本人は「捨てるな!」の一点張り。


 だがしかし、この件に関しては他の家族には内密にしろとの徹底振りだ。


 果たして彼は、無自覚なのか判断がし難い。






 そして結婚を機に、白金家の会長から譲り受けた新築の御屋敷には、政宗専用の書斎が存在するが…そこには、仕事関連の資料などが並ぶ最中に、趣味の愛読書(少年漫画)がコーナー化していた。



 それは勿論、雪乃は知らない政宗の一面なのである。



 二人が初めて顔を合わせたのは、お見合いの日。去年の11月22日。


 お互いかなりの有名人として存在していたが、その日まで一度たりとも生の姿を見掛ける事は無く過ごしてきたのだ。


 
 最大手プラチナカンパニーの究極の美人令嬢を初見した感想は…



「強靭そうな女だ。」と女性の褒め言葉としては最悪な一言を溢し、見合い中の雪乃を一瞬で怒らせた張本人だ。

 
 だがしかし、お互いに親の命令には逆らえない。


 初めてのお見合いだが、これを決めなければならないと強い思念を抱き、尚且つ容姿だけは妥協はしたくなかった互いの一面から、直ぐに結婚へと踏み出た次第である。