政略結婚から始める熱愛偽装




 神楽 政宗(まさむね)…その名を聞けば、皆一様に応える。


『か〜ぐらか〜ぐら。なんでもおまかせ、か・ぐ・ら!』


その男、神楽 政宗が幼少期の頃に出演したCMにて、このキャッチフレーズを歌いながら踊る姿を…。


 子供用サイズの作業着に袖を通し、安全ヘルメットを被った神楽の御曹司は、当時『可愛い』だの『自分の息子にもコスプレさせたい』だのと…きつい・汚い・危険の悪いイメージが蔓延る建設業界に、希望の光が差し込むのだった。



 だが一方で当人は、「未だに、モノマネする奴が居やがる…。」あのCMは黒歴史なのだと語る。



 そして、例の白金の令嬢との結婚を機に、夫婦それぞれの輝かしいメモリアルがメディアで配信されると、今の若者達にも昔の映像が知り渡られ、某SNSでは再現動画が人気となり、政宗の羞恥心は限界に達しようとしていた。




「俺の記憶を消すスイッチが有るなら、直ぐに押したいもんだ。」




 齢二十五歳、国内最大手ゼネコンのグループ次期社長となる予定の政宗だが、頭の中には水色の猫型ロボットが思い浮かぶのである。