政略結婚から始める熱愛偽装



 仕切り布の裏には、庭園内を隈無く見渡せる監視カメラの映写室が在る。

 雪乃は怒り心頭に息を荒らげながらそこへ辿り着くと、警備員を押し退け椅子に掛けると、血眼になりながらモニターを凝視し始めた。



「奥様如何なさいました⁉」

「あいつよ!あいつ!!あの男はどこよ。」

「…あ、あいつと言いますと?」

「あの男に決まってるでしょ!!」


 
 
 はて、あいつとは何者を指すのだろうか。傾げた中年の男は、かの有名な白金のお嬢様の豹変振りに、動揺を隠せないでいた。



「あいつって言ったらよ…あいつよ…。」


 次第に落ち着きを取り戻し、その場で項垂れだす雪乃は艶っぽくも憂いており、傍で見ていた警備員は生唾を飲み込んだ。











 暫くその場から動けずにいると、背後から忍び寄るのは男の影…。