女子大在学中から両親両者に呼び出され、自分を一方的に知る爺さん共の相手、対して美味しくもない苦い茶を泡立てる着物正座地獄。
様々な人物と接触し、似たり寄ったりな上級国民の褒め合い貶し合いのオンパレードを聞き過ぎた雪乃の耳には、いつしか完全防備フィルター(聞こえてないフリ)が付いてしまった。
だがしかし、雪乃もたった一人の人間。それはどの人間とも変わらずで、心というのは正直だ…。
外部からのストレスを受け、完成してしまったのはその性格。
先程割愛した『◯ネ』ワードは、自分に害を為す者には必ずと言っていい程、心の中で吐き捨てる。極偶に口に出す事もあるが、相手の耳に入る事はほぼ無い。
さて、とウォークインクローゼットの中へと入っていった雪乃は、先日購入したばかりの某ハイブランドの新作ワンピースに袖を通す。
それは結婚した当初に招待されたブランドの新作展覧会で受注しておいたオリジナルサイズの品物である。
春はあけぼの…本日は寝坊助でございましたが、普段はしっかりと起きる。と雪乃は自称します。
実際のところ、朝は非常に弱い。それでも遅刻ゼロなのは、彼女のセンス?
着替え終えた後、姿見の前で吐かれたひと言は…
「やっぱダサかったわね。」
自分の好みではなかったのか、ハイブランド品にケチを付けるのである。
これが神楽 雪乃(旧姓:白金)の出勤前のルーティンである。