あの時は知らなかった。

彼女が本気で僕を好きになってくれていて、それが彼女の初恋だなんて。

彼女が僕にかまってくるのは、気まぐれなのか何かの冗談じゃないかとさえ思ってしまっていたから。

あの時矢野さんが教えてくれなかったらと思うと....本当に怖くなる。

あんなひどい事を言って、本当は後悔していた。

彼女に謝りたいと思っていた。

だけどあの後あまりに気まずくて、話しかけるどころか話しかけられてもまともに答えることもできなかった。

声をかけてくれたのに、無視するかのように逃げてしまったこともある。

そんな僕なのに....彼女は僕を嫌いになるどころか変わらず好きでいてくれた。

こんな奇跡があるのかな?

僕が抱き潰してしまったせいで、疲れて眠る彼女の顔を眺めながら思う。

どうしてこんなに僕を好きでいてくれるのだろう?

ずっと不思議だった。

今日だって元カノに会って不快だったはずなのに、そんな気持ちを微塵も見せない。

『ヤキモチ妬いちゃった』って可愛く言うだけで、僕の心配までしてくれる。

その上、『お仕置き』と言いながら.....あれはいったいどんなご褒美なんだ。

どこもいいとこの無いはずの僕の全部が好きと言ってくれる。

僕に自信を持たせてくれる。

そんな彼女をどうしようもない位に愛しく思う。

本当に莉緒は僕のものなんだ。

もう手放してなんてあげられない。

そう思っていたのに彼女は先回りして、早く僕のお嫁さんになりたいって言ってくれた。

美人で、優しくて、愛らしくて、時々天然で。

そんな彼女が愛しくてたまらない。

僕はもう彼女無しでは生きられない。

彼女もそうだといいな....と思いながら、目の前の可愛いおでこにキスをした。 【完】