そんな毎日が続いたある日、亜香里と社員食堂に行きパスタランチを手にして席を探していた時、奥の席に佐伯くんの姿を見つけた。

その瞬間、彼の元に足を進める。

「莉緒?」と言う亜香里の声が聞こえたけれど、私は駆け寄るように佐伯くんの元に向かった。

嬉しいことに佐伯くんの隣の席は空いていて、「佐伯くん、ここいい?」と声をかけた。

私の声に一瞬目を見開いて驚いた顔をした佐伯くん。

「あ.....はい。...どうぞ」

前髪の隙間から見えたあの瞳に胸が高鳴って、彼から目が離せなくなってしまった。

ああ....やっぱり好き。

高揚する気持ちに比例して、その熱が胸から上へ上がっていくのを感じる。

「あのね...佐伯くん。私....」

何を話すか考えていないのに、言葉が先に出る。

でも話始めた時、「雨宮さん」と前の席から名前を呼ばれて、一度私の声が途切れた。

でももう私には佐伯くんしか見えてなかった。

食べていた定食のトレーを手にして立ちあがろうとした佐伯くんを引き止めようと、焦って「佐伯くん!」と名前を呼んだ。

立ち上がりかけた彼は腰を下ろして、俯きがちに私を見てくれる。

久しぶりに向き合えた嬉しさに震えさえ出てきた。

言葉が上手く浮かばない。

伝えたいのは.....。

「佐伯くんが好きなの!」

速くなる鼓動を吐き出すように、声量も大きくなってしまった。

ガン見した佐伯くんが目を剥いたのを見て『あっ...』と思ったけど、一度吐き出した気持ちは止められない。

「ずっと佐伯くんと話したかったの。ずっと佐伯くんのことが気になって。でもタイミングが合わなくて。私、佐伯くんが好き!佐伯くん.....」

「もうやめてください!」

私の告白を遮るように叫んだ佐伯くんの声に息を吞んだ。

「め...迷惑なんです.....」

今度は消え入るようなふり絞った声に、胸がギュッと苦しくなった。

俯いてもうこっちを向いてくれない佐伯くんを追いかけるように右手を伸ばして「佐伯くん...」とその名を呼んだ時、おもむろに立ち上がった彼はトレーを持って行ってしまった。