男が好む髪型・メイク・服装。そしてあの喋り方。

作り上げているその外見の頑張っている感を、同性としては感じてしまう。

まあ男には可愛いと思えるタイプなんだろうな。

しかし....佐伯にこんな女と付き合っていた過去があったなんて。

それに余計なことに別れた理由までみんなの前で言うなんて何だこいつ。敵認定。

そんな事を考えている間にもこの女は、マウントを取りながら話し続ける。

「ね〜佐伯くん。佐伯くんも何か言ってよ〜。美歌何か悪く言われちゃってるんだよ?」

「..........」

うつむいて何も言葉にしない佐伯を煽るかのようにかまってくる。

本当に嫌な女。

今まで佐伯が女性に距離を取ってきたのは、この女のせいだなと確信した。

「何で何も言ってくれないの?佐伯くんは好きって言ってくれていたのに、美歌が振っちゃったから?」

悪気ありませーんって顔して爆弾をぶっ込んできた女にさすがに切れた。

「あんたね!いい加減にしなさいよ!佐伯の元カノだか何だか知らないけど、くだらない事グダグダ言ってんじゃないわよ!」

「え〜怖ーい秀くん。何で美歌が怒られないといけないの?」

秀くんとやらの彼氏に泣きつこうとした元カノに更に言ってやろうとした時、「ごめんね〜、遅くなっちゃって」と華やかな香りの風を纏いながら莉緒がテーブルへ到着した。

一気に空気感が変わる。

「莉緒!」

この修羅場のような状況の中、莉緒が登場して焦って佐伯を見ると、俯いたまま身体をこわばらせて動揺しているのが分かる。

そんな中で莉緒は、急いで来てやや早くなった呼気を整えながら笑顔を見せた。

その美たる笑みに、周りの席からのざわつきが起きた。

元カノの「えっ....」と思わず漏らした一瞬を逃さず、わざと聞こえるように言ってやる。

「ほらー!佐伯がお待ちかねだよ。莉緒が遅くて元気ないんだから、早く隣に座ってあげて」

手をヒラヒラさせて莉緒を促すと、莉緒はすぐ佐伯の横に座り、うつむく佐伯の顔を覗き込んだ。