「…あぁ、緊張する」

俺ではなく、うちの父の言葉だ
紗世の両親は事故で亡くなっているため、バージンロードで一緒に歩くのはうちの父の役目となった

「紗世ちゃんは娘のように思ってきたから、一緒に歩けて嬉しいんだけど、転ばないか心配で…」
「紗世が怪我しなければ父さんは転んでも大丈夫」
「あぁ、うちの息子が冷たい」

「紗世、大丈夫かな…」
マリッジブルーにはなっていないようだが、
昨日は寝つくのに時間がかかっていた…

「新郎様、新婦様のご準備が整いました」
「はい、ありがとうございます」

「初人、どれだけ紗世ちゃんがかわいくても堪えなさい、夜まで」
「っ!何いってんだくそ親父!」
「あぁ、うちの息子が冷たい…」
「今のはあなたが悪いわよ…」

呆れる両親を背に紗世の元へ向かう