「藤原」

酔った初人を連れて外に出ると、片桐くんが声をかけてきた。

「片桐くん、ごめんね、初人が絡んじゃって」
「ううん。俺の、さっきの言葉、本気だから」
「ん?」
「隙があったらすぐかっさらいにいく」



「ダメですよ、うちの彼女口説かないでください」

「初人…酔ってたんじゃ」

「酔わないよ、あれくらいで」

「酔った振りして絡んで来たわけだ?」

「いやいや、ほんとのことなんで。20年大事にしてきた子横取りされるほど、脆弱なわけないでしょ」

「ま、告白に20年かかる幼なじみから奪うのは簡単でしょうからね」


「片桐くん…」

「ま、隙が出来るの待ってるよ。藤原、気をつけて帰れよ」

「あ、うん、片桐くんも」


後ろ手でひらひらと手を振って帰っていく片桐くんの背中をじっと睨む初人は少し怖かった