ずっと幼なじみだったから想像が出来ない

それが理由なら俺のことを意識させていくしかない
まずはデートだ。

小さな頃からとにかく紗世が好きなものは聞いて、覚えて、リサーチした。
伊達に20年、初恋拗らせてた訳じゃない。
好き好んで、紗世の好きになった奴の話を聞いていた訳じゃない。

紗世の憧れてきた奴等には紗世を傷つけないよう断るように手を回してきた。
その努力がやっと実になる日がきたんだ。

「んで、抱いたくせに振られたんだ?」
「は?振られてねーよ、やっと俺を意識させるとこまで来たんだよ」
「実力行使はどうかと思うけど」
「うるせ、なんとでも言え」

俺に憎まれ口を叩くのは親友の葛西悠真(ゆうま)。
なんだかんだいいながら、俺を応援してくれるいい奴ではある。
美容師の悠真に髪をカットしてもらいにきたついでに、事の顛末を話した。