「ねぇ、また振られたぁ…っ」

隣で突っ伏して泣く彼女は、今日も憎くて愛しい。

「泣くなら俺にしときなって?」

もう、何回このやりとりをすれば振り向いてくれるのか。

「無理だよ、私たち幼なじみでしょ?」
「初人(ういと)まで傍にいてくれなくなったら、私、誰に弱音吐いたらいいの?寂しいこと言わないで」

何故俺が傍にいなくなる前提なんだ
これまでの奴等と一緒にすんな
何年初恋拗らせてると思ってるんだ…

「俺はずっと傍にいるよ、絶対離れない」


酔っぱらい相手に真剣に語る

「ほんと?ずっと幼なじみでいてくれる?」

潤んだ瞳で残酷なことを言う。

「っ…」


「あぁ、私幼なじみまで失うんだぁ…」

もういっそ、この口を塞いで連れ去ろうか。
初恋を自覚して、もう20年になる。

そろそろ本気で振り向かせないと
死ぬまで幼なじみなんだな、俺は。

「もう幼なじみは嫌なんだよ…」

自分でも驚くほど低くてか細い声が出た。

「え、初人ごめんね、怒っちゃった?
も、もう泣かないからそんなこと言わないでっ」

一緒にいて初めてこんな低い声で喋る俺に本気で動揺している紗世が可愛くて堪らない。