「そんなに心配なら、レストランに遅れるって連絡しといてもらったら?」

 紺くんが口を挟んできましたが、わたしは思わず「ちがいますっ!」と強い口調で言ってしまいました。

「ご、ごめんなさい。でもそうじゃなくて、紺くん……一緒に今エレベーターにいる彼が、とても怖がっているんです。いつもならこのくらいのアクシデント、全然平気そうにヘラヘラしてるはずなのに……。だから、おねがいします。一刻も早くここから出してください」

『わかりました。こちらも最善を尽くしますので。とにかく、もうしばらくお待ちください』

「はい。わかりました……」

 わたしは、しゅんとしたまま紺くんの方を振り向きました。

「すみません、紺くん。最低でも20分くらいはかかるそうです」

「うん。そっか。ありがとね」

 そう言うと、紺くんは、そのままずるずるとしゃがみ込んでしまいました。

 本当に大丈夫なのでしょうか……。

 とても心配で、思わずぎゅっと胸の前で両手を握りしめて紺くんを見つめていたら、紺くんがゆっくりと顔をあげました。