***

「ようこそ、お待ちしておりました」

 三組の前に現れたホテルの従業員が、深々と頭を下げる。

「本日は、和食、中華、フレンチと、それぞれお一組様ずつお席をご用意させていただきました」

 そう言いながら、三枚の真っ白い封筒をみんなの前に広げて見せた。

「え、みなさんと一緒じゃないんですね……」

 初が少々不安げな声をあげると、

「せっかくのご褒美クリスマスディナーなんだから、そのくらいしてもらわなくっちゃ」

 紺が親指と人差し指で丸を作りながら、いつもの悪い顔をする。

「ち、ちょっと紺くん、クズ感があふれ出ちゃってますよっ」

 そんな紺のスーツの袖を、初が慌てて引っ張る。

「あ~、めーちゃんとふたりっきりで夜景を見ながらディナーなんて最高だなぁ」

「あたしは食べ放題がよかった」

 すでにうっとりとした表情の七海とは反対に、牛若はちょっと不満げな表情を浮かべている。

「虹叶、なに食べたい?」

「フレンチはマナーがよくわからんから、できればそれ以外」

「おっけー、任しといて。こういうの、結構得意なんだよね」

 そう言いながら、星出がなぜか腕のストレッチをはじめた。