「悪い。余計なお世話だったな。別に、星出がなにもできないと言ったつもりはないんだ」

 虹叶の声が、なんだか沈んだように聞こえる。

 ひょっとして、あたしが怒ったんだと勘ちがいしてる?

 あたしは、背中を向けたまま慌てて大きく首を左右に振って見せた。

「……なことない」

「今、なにか言ったか?」

 よく聞き取れなかったのか、虹叶が聞き返してくる。

 こんなこと、何度も言わせないでよ。

「そんなことない、って言ったの。……余計なお世話、じゃないから」

 絞り出すようにして虹叶にそう返すと、密かにぜーはーと深呼吸する。

 こんなの、全然あたしのキャラじゃないのに……虹叶のあんな言葉をうれしく思うなんて。

「そうか。……ああ、そうだ。これ、実家で飼ってる犬の写真だ」

 は? ほんと今日の虹叶、どうしちゃったの??

 いろいろ唐突すぎるんですけど!?

 心の中でひとしきり絶叫したあと、意を決して虹叶の方を振り向くと、虹叶が黙ってスマホをあたしに差し出した。