めーちゃんをダマすなんて、僕にはできない。

 ……けど、金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)になるためには仕方ないんだ。

 自分にそう言い聞かせると、僕は膝をついてめーちゃんにすがりついた。

「こわいよ~。めーちゃん、助けて。なんとかしてぇ」

 必死に演技してみせる僕のことを、めーちゃんが冷たい目で見下ろしてくる。

「なにやってんだ、伸太郎。もうちょっとマシな演技はできんのか」

「うっ……辛口なめーちゃんも最強にかわいい……」

「バカなことを言ってないで、お前も考えろ。どうせこれも課題なんだろ」

 全部バレてるし。

「ふたりでこの状況を切り抜ける方法を考えろってさ」

 立ち上がって膝の汚れを払いながら、僕はめーちゃんにそう言った。

 本当はちょっとちがうけど。

「とりあえず、あの非常呼び出しボタンを押してみてくれる?」

「どうしてあたしにそういう面倒なことを押し付けようとするんだ」

 ブツブツ文句を言いながらも、つま先立ちで必死にボタンを押そうとがんばるめーちゃん。

 ああ、ちっちゃいめーちゃん、やっぱりかわいい……じゃなくて。

「大丈夫だよ。今、僕が押さしてあげるからね」

 これも課題のため――なんて心の中で言い訳しつつ、僕はめーちゃんを抱き上げた。