俺はそっと運瑠に近づく。
すると声が聞こえた。
運瑠の今にも消えてしまいそうな声が……。
「…一人は……一人ぼっちは嫌だよっ」
運瑠……。
「お願い…私もそっちに連れてって…」
俺はその言葉を聞いた瞬間、無意識に運瑠にそっと触れていた。
「それは…無理なお願いかな」
そう言って俺は運瑠の震えている肩にそっと手を置いた。
俺はお前のこと手放してやれないから。
「ごめんな、運瑠。今まで辛かったよな?夕飯もずっと一人で食べさせてごめん」
本当はお前と一緒に向かい合ってお前が作った飯を食べたかった。
笑ってそばにいたかった。
俺は愛情表現が下手だ。
だから傷つけないように運瑠から距離をとったんだ。
それが運瑠を傷つけていたなんて…。
「桐野くん…どうして…」
「……運瑠のことが心配で」
こんな時も俺は"好き"って言えないんだ。
弱いな。
「運瑠がいなくなったら俺は一人になる。俺はもう運瑠がいない人生は考えられない。だから行かないで、運瑠」