「桐野くんのこと何も知らないくせに!」
私はそこまで言ってハッとした。
「あ…」
「運瑠ちゃ……」
「ご、ごめんなさい!」
私はそう言ってその場から走り去った。
どうしよう…。
いつも帰ると笑って迎え入れてくれてたのに。
優しくしてくれてるのに……。
私はなんてことを。
私は無意識にお墓のところまで走ってきていた。
「はぁはぁ…っ」
お母さん、お父さん…。
私は両親が眠る墓の前で膝から崩れ落ちた。
「…一人は……一人ぼっちは嫌だよっ」
一人になりたくないからあの高校に入った。
一人になりたくないから住んでいた村に来た。
桐野くんは実家に帰るから。
一人になってしまう。
それが怖かった。
「お願い…私もそっちに連れてって…」
お願いだから……っ!
「それは…無理なお願いかな」
そう言って彼は私の肩にそっと手を置いた。