まるで魔法にかかったようだった。

みんな、どこか悲しそうで。

寂しそうで。

普段のいじめっ子の仮面が、ほんの少しだけ、取れた気がした。

仮面の割れ目のスリットから見える、みんなの素の表情。

それは、悲痛な顔で。




その魔法を破ったのは、予鈴。

もうすぐ午後の授業が始まるという合図だった。


「じゃ、ぶーちゃん、明日を楽しみにしていてね。」


5人は去っていった。




鏡に自分の姿を映す。

涙で顔がぐしゃぐしゃになり、髪の毛はボサボサ。

服がはだけられて、水が滴っている。


みっともない。
惨めだ。


ヒュウッと風が吹く。

寒い。

もう、梅雨も明ける。

空からは燦々(さんさん)と太陽光が降り注ぐ。

でも、あたしのところは、寒い。





あたしは、冷たく、暗い、狂気の世界で生きている。