…これは、泥水?


「キャハハハハ!!だっさ〜い!!」


麗華の笑い声で我に帰った。


「うっ…ゴホッゴホッ!…おえ…ペッ…!」


慌てて口に入った泥を出す。

尻餅をつき、上を、奈々美の顔を見上げた。

奈々美は、奈々美ではなく、ななみんの顔に戻っていた。

薄っぺらい笑みを口に貼り付けて軽蔑したような冷たい視線であたしを見ている。

もう、奈々美の面影は感じられなかった。


「きったなぁ〜い!!」

「写真撮ったよ!」

「うわっ!マジで泥だるまじゃん!」

「だっさぁ〜!」

「すっごいブスになったね!」


みんなであたしをからかい、口々に悪口をぶつける。


「奈々美、やるじゃん!」

「いっつも後ろの方で何もしないからさぁ、でも、見直したわ〜。」

「あは。うん。あたしも、ちゃんとやらなきゃね。」


奈々美はみんなに肩を叩かれてにこにこ笑っている。



———なんで。



奈々美は、こんなことをして笑う子じゃない!


「今日のところはこれくらいにしといてやるよ。清水愛香。でも、ウチら、許さないからあんたのこと。せいぜい明日を楽しみにするんだね!」


聖理奈があたしの胸ぐらを掴んで言い、あたしは校舎裏に一人で取り残された。