でも…

麗華は、「まってました」というような顔をして、言った。




「百合香ちゃ〜ん?何言ってんのかな?そんなことをしたら、どうなるか分かってるよね?」



麗華がスマホを左右に振る。



「この中には、あんたのだーいじなデータが入っているんじゃなかったっけ?」



ニヤリと笑う。

勝ち誇った笑みだった。


しかし、百合香もやり手だった。

百合香もスマホを突き出す。




「麗華姫が、愛香の首を絞めていたところ、動画に撮っているから!!あたしの弱みを握っているっていうなら、あたしだってこの動画をまくから!」




百合香…やる!

どういうやり方か分からないけど、隠し撮りしていたんだ。




「動画をまかれたくなかったら、愛香を解放して!!」




取り巻きたちは息を呑んで見守る。

誰も一言も発さない時間が続いた。

そして、麗華の顔が歪む。



「百合香…あんた…」



麗華が立ち上がった。

百合香が数歩後退する。



「許さない…」




麗華の手は握りしめられていた。

目がギラギラと輝く。


本気になった麗華の怖さはあたしが身をもって知っている。



「百合香!逃げて!」




あたしは咄嗟に叫んだ。

顔に、麗華のローファーがぶつかる。




「テメェら!!ふざけんなよ!何グルになってあたしに逆らっているんだよ!ふざっけんな!」





逃げ遅れた百合香の顔を麗華が叩く。

階段のところで百合香がよろめいた。



「危ない……!」



百合香はもちこたえて、スマホを胸に抱き抱えた。